動物病院の麻酔のお話(3)

動物病院の麻酔のお話(藁戸由樹)

こんにちは!

高橋ペットクリニック
獣医師の藁戸です。

今回は前回の「導入」に続き、「挿管」に関して書きたいと思います。

挿管って⁇

これは動物の気管の中に専用のチューブを入れることで、動物の体外と気管をつなぐことができ、空気の通り道を確保する事です。

気管チューブとは下の写真のものです。



このチューブを挿管すると、下の写真のようになります。
口の中を通り、首まで続いている白い管が気管チューブです。



これには様々なメリットがあります。
(1)麻酔中、いつ呼吸が止まっても、気管チューブを介して、酸素を送ることができる

(2)肺の機能や、血液の巡りなどを推測する事が出来るため、より精密な管理が実施できる

(3)動物が万が一麻酔中に嘔吐しても、甚大な誤嚥を防止できる

(4)心臓や肺など、開胸が必要な手術を可能にし、筋弛緩薬を使用する事も可能になる


一方デメリットもあります。
(1)短頭種などでは気管挿管の難易度が上がる場合があるため、習熟が必要

(2)血圧や脳圧、眼圧の変動

(3)気管刺激による発咳

(4)気管チューブによる気管の裂傷


挿管のメリットとデメリットを天秤にかけると、日常的な手術においては得られるメリットの方がはるかに多いため、ほぼ全ての症例において挿管を実施しています。

そのなかで、挿管の難易度が高いケースがあります。それが短頭種(フレンチブルドック、パグなど)と呼ばれるワンちゃん達です。

「短頭種の麻酔は危険だ」

このような話を耳にされる方は多いのではないでしょうか?

この子たちの麻酔リスクが高いと言われる理由の1つは、実はこの「挿管」にあるのです。
次回はこの短頭種の麻酔に関して書きたいと思います!